お父さん
お元気ですか?
私はあれから元気です。
母に心配されているけれど
やっぱりお仕事後のビールは欠かせないです。
ちっちゃい頃からお父さんが、
家で美味しそうにビールをのむ姿を見てきたから
私はそれにすごく憧れていました。
そこは似てしまいましたね。
今日は母の日です。
私はいつものように母がリクエストした
黒いくつしたを2足買いました。
お花もプレゼントしたいなぁ。
あ!妹のお腹ももうパンパンです。
今にもうまれそう!
本当に本当に楽しみです。
また来月から遠くに出張に行きます。
私がこうやって元気にいられるのも
おばあちゃんとお父さんが、ひきあわせてくれた出会いによって。
とてもとても感謝しています。
名古屋だけじゃなくて
東京にも群馬にも宮城にも友だちができました。
あ、好きな音楽もバンドも、いつもとなりにいてくれます。
大好きな人たちに囲まれて私はいつも笑顔です。
本当にありがとう。
またね、元気でね。
そしてこれからも、私たちのことを見守っていてね。
私たち家族も想っているよ。
5月8日
pm 9:28
真由子
2月14日
出張先の群馬から急遽、名古屋へ帰る
そして実家へ
病室から景色を望む
2月18日
約束の時間に
父に会いにいく
今日は父から東北出張のときの話をきいた
陸前高田によく宿泊していたらしい
五能線という電車がいいということも
母がくるまでふたりきりで話した
「お父さん、一緒に写真とろう」
写真嫌いな父はとても嫌がって
この日結局、写真は撮らなかった
2月18日
23:17
こんなエピソードがありました
私が群馬から入院する父に出した手紙
病室に父と母、そして妹があつまったときに
看護士さんが
「加藤さん、郵便物が届いてますよ」
と私の手紙が届いたらしいです
私たち家族があつまった瞬間
想いが引き寄せあう
そしてみなが私に宿った瞬間は
父がドクドクと体に流れるものを吐き出したとき
私は夢中に手元を動かしていました
私の役割はこれなんだって思いながら
やさしい色のお花
皆からの手紙
母が炊いたごはん
最期はそれらに囲まれながら
白い服を着て
父は大きな箱形の船にのって
長い旅に出ました
とてもきれいな顔をしていました
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ふたりが亡くなるときに
どんなに私のことを気にかけたか、
どれだけ強く祈ったかを考えるだけで
ありがたいと思う。
私はふたりにもらった時間だけで、
充分しっかりと今日も歩いているんだよ、
と話しかけずにはいられない。
いろいろな人がそうやって、
今いない人に話しかける言葉はきっと
目に見えない花になってどこかで咲いていると思う。
サーカスナイト / よしもとばなな
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